阿頼耶識

曖昧さ回避 阿頼耶」はこの項目へ転送されています。数の単位については「命数法#小数」をご覧ください。
仏教用語
阿頼耶識
八識説の概念図の一例
サンスクリット語 आलयविज्ञान
(IAST: ālaya-vijñāna)
中国語 阿頼耶識 , 阿梨耶識
日本語 阿頼耶識
(ローマ字: Arayashiki)
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阿頼耶識(あらやしき、: ālaya-vijñāna、आलयविज्ञान[1]: kun gzhi rnam shes)は、瑜伽行派独自の概念であり、個人存在の根本にある、通常は意識されることのない(viññāṇa)のこととされる[2]アーラヤ識[2]眼識・耳識・鼻識・舌識・身識・意識末那識・阿頼耶識の8つの識の最深層に位置するとされる[2][注釈 1]

原語と漢訳

「阿頼耶識」は、サンスクリットの ālaya( आलय) の音写と、vijñāna(विज्ञान) の意訳「」との合成語[2]

ālaya の語義は、住居・場所の意であって、その場に一切諸法を生ずる種子を内蔵していることから「蔵識」とも訳される。「無没識(むもつしき)」と訳される場合もあるが、これは ālaya の類音語 alaya に由来する異形語である。旧訳では阿羅耶識阿梨耶識(ありやしき)」。また、蔵識(藏識)、無没識(むもつしき)」とも訳し、頼耶識頼耶等と略されることもある。

はたらき

ある人の阿頼耶識は、蔵している種子から対象世界の諸現象<現行(げんぎょう)法>を生じる。またそうして生じた諸現象は、またその人の阿頼耶識に印象<熏習(くんじゅう)>を与えて種子を形成し、刹那に生滅しつつ持続(相続)する。

この識は個人存在の中心として多様な機能を具えているが、その機能に応じて他にもさまざまな名称で呼ばれる。諸法の種子を内蔵している点からは一切種子識(sarva-bījaka-vijñāna)、過去の業の果報<異熟(いじゅく)>として生じた点からは異熟識(vipāka-vijñāna)、他の諸識の生ずる基である点からは根本識(mūla-vijñāna)、身心の機官を維持する点からは阿陀那識(ādāna-vijñāna、執持識執我識天台宗では末那識の別名)と呼ばれる。

法相宗の説

唯識法相宗は、万有は阿頼耶識より縁起したものであるとしている。それは主として迷いの世界についていうが、悟りの諸法も阿頼耶識によって成立すると説くので、後世、阿頼耶識の本質は、清らかな真識であるか、汚れた妄識であるかという論争が生じた。あるかどうかもわからない。

  • 阿頼耶とは、この翻に蔵となす。 唯識述記 2末

三種の境

  1. 種子(しゅうじ) 一切有漏無漏の現行法を生じる種子。
  2. 六根(ろっこん) 眼耳鼻舌身意の六根。俗に言う「六根清浄(ろっこんしょうじょう)」とは、この眼耳鼻舌身意が清浄になるように唱える言葉。
  3. 器界(きかい) 山川草木飲食器具などの一切衆生の依報。

阿頼耶識は、常にこの3種を所縁の境とする。

心に積集、集起の2つの義があって、阿頼耶識は諸法の種子を集め、諸法を生起するので、心という。

  • あるいは心と名づく。種々の法によって、種子を薫習し、積集する所なるが故に。 唯識論3
  • 梵で質多という。これ心と名づくなり。即ち積集の義はこれ心の義。集起の義はこれ心の義なり。能集してもって多くの種子生ずる故に。この識を説いてもって心と為す。唯識述記3末

脚注

注釈

  1. ^ 法相宗では、心は阿頼耶識までの八識とする。天台宗では阿摩羅識を加えて九識、真言宗ではさらに乾栗陀耶識(紇哩陀耶識、hṛdaya-vijñāna)を加えて十識とする。

出典

  1. ^ 「阿頼耶識」 - 日本大百科全書(ニッポニカ)、小学館
  2. ^ a b c d 岩波 仏教辞典 2002, p. 19.

参考文献

  • 中村元ほか(編)『岩波 仏教辞典』(第二版)岩波書店、2002年10月。 

関連項目

教義

心王 - 心所 - 煩悩 - 末那識 - 阿頼耶識 - 種子 - 薫習 - 三類境 - 一水四見 - 遍計所執性 - 依他起性 - 円成実性 - 転識得智

インド

弥勒 - 無著 - 世親 - 徳慧 - 安慧 - 親勝 - 歡喜 - 淨月 - 火辨 - 勝友 - 勝子 - 智月 - 陳那 - 無性 - 護法 - 戒賢 - 法称 - 寂護 - 蓮華戒

中国

真諦 - 玄奘 - 基 - 慧沼 - 智周

日本

道昭 - 智通 - 智鳳 - 行基 - 義淵 - 玄昉 - 徳一 - 真興 - 貞慶 - 良遍 - 光胤

瑜伽師地論 - 摂大乗論 - 唯識三十頌 - 唯識二十論 - 成唯識論 - 述記 - 了義燈 - 演秘 - 同学鈔 - 観心覚夢鈔

学派

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